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「協力と罰の生物学 大槻久著 2016年」talk back感想 No.97

こんにちは naka です。

岩波科学ライブラリーの「協力と罰の生物学」をandroid talk backで耳読した感想です。

著者は大学の助教で、数理生物学などが専門の方ということです。

生物の世界では、お互いにwin winの関係である共生や、片側にのみメリットのある寄生の関係などがあり、本来はwin-winになるはずが、ズルをするフリーライダーが存在して自分だけ得をしようとする者が発生します。フリーライダーが多くなりすぎてしまうと、その社会全体が成り立たなくなってしまい、フリーライダーの排除や、罰を与える仕組みが発生してきます。この本はそうした仕組みについて解説している本でした。

本の前半では、虫などの自然界でのフリーライダー排除のメカニズムについてで、後半では人に対する研究結果から、ズルに対する罰を与えるのに支払うコストについてなどの話題になってきます。有名な囚人のジレンマの逸話などは、他の本でもよく出てくる話もあったりします。世の中の損得の話では、微妙なバランスというか、時代によってや、地域差などでも変わってくるというところがあるということを考察していました。

本の中では、さまざまな例が挙げられている中で、興味深かったのは、動物の脳の大きさと、形成される集団の数が比例しているというものでした。脳が大きくなるとそれだけ個人個人を記憶・識別することができるようになるということで、それが人の場合には150人になるということでした。得られる食料の供給が不安定な場合、余った食料は将来お返しが期待できる仲間に分け与える確率が高いということで、これが集団を形成していい面がある反面、その輪の外に対しては反動で厳しい態度をとるようになり、これが集団間の激しい争いになっていくということで、説明されていました。

この本の最後の方の考察では、罰を与える組織に対するコスト、具体的には警察などのコストをどう考えるかについて、実施された研究の紹介がありつつも条件が少し変わることでどんどん結果が変わっていくのが面白いと思いました。今の時代の就職先としての公務員離れなども何かこの本に紹介されている研究に繋がるものを感じさせてなんとも言えない気持ちになりました。

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naka
50代男のサラリーマンです。日々試したこと、読んだ本の感想や思ったことを書いています。

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