読書

「遺伝子ー親密なる人類史(上) シッダールタ・ムカジー著 仲野 徹監修 田中 文翻訳 2018年」audible感想 No. 52

「遺伝子ー親密なる人類史(上)」をaudibleで聞きました。

遺伝子の発見に関する本を何冊か読みましたが、これまで読んできた本が、画期的な研究・発見に関してまとめたものにであるのに対して、この本は、同様に発見について、より詳細にまとめられていることに加え、その成果の社会への影響についても書かれていることです。20世紀初頭に発生したアメリカや欧州での優生学についての話の部分は、これまで歴史として時系列でちゃんと聞いたことがなかったので遺伝子への理解が深まるのと並行して語られているのが不気味でした。ドイツではとてつもなく悲惨なことになりましたが、アメリカでも程度こそ全く違えど広まっていたとのことでした。当時の旧ソ連ではまた違った評価の元、共産主義が進められていたとのことは興味深いところでした。

それにしてどの本でも共通して言えるのはメンデルの研究の画期的であったという評価です。この本でも、メンデルの論文が出て数十年後に同様の結論に至った複数の研究者が、悔しがる様が描かれていて、その凄さが表されています。

また個人的に興味深かったところは、遺伝子組換え技術がでてきて、その危険性について研究者自らが認識して話し合いが行われた点です。原子力技術については、アインシュタインから出されたその危険性の報告に対して、アメリカでは国が委員会をつくって主導しているのに対して、研究者により自らの研究に制限を加えるようなルールを考えていくところは面白く読むことができました。

このaudibleは上巻のみ聞くことができ、遺伝子組み換え技術の開発、エイズの発見のところまでです。下巻は2023年の後半に出されてくるようです。audibleで聴くだけでも相当な時間がかかりました。面白かったもののkindleで下巻を買って読むのはちょっとしんどいということでaudibleを待ちたいと思います。

つい最近まで歴史と言えば、吉川英治、横山光輝、藤沢周平といった戦国時代から江戸時代にかけての歴史小説で、科学の歴史についてはそれほど興味が持てないでいました。過去に関連する本など読んだことはほぼ無く、そんなことに使う時間があったら今の新しい技術などを追い続けたい気持ちが強かったのですが、50歳を超えた頃から、一つの教養というか知っていると面白いかなと思うようになりました。

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naka
50代男のサラリーマンです。日々試したこと、読んだ本の感想や思ったことを書いています。

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